【絵を描く少年が、家を設計するようになるまで】
物心ついた頃から、絵を描くのが大好きでした。
高校時代にはアートスクールに通い、漫画家や画家になりたいと思っていた私が、
なぜ“家を設計する”という道を選んだのか。
それは、育った家に対する違和感がきっかけでした。
実家は、山のふもとにある湿気の多い家。
光も風も入らず、動線も悪く、家族と顔を合わせずに1日が終わることも。
ある日、その家の間取りを紙に描いてみたんです。
すると「なぜ居心地が悪いのか」が次々と見えてきました。
光を遮る壁。風が通らない配置。
広すぎる子ども部屋にこもりがちになる自分。
そして家族の気配を感じない動線。
気がつけばその図面を、どう直せば良くなるか考えている自分がいました。
この「空想のリノベーション」が、私の原点です。
【私が住宅設計にこだわる理由】
暮らしは、常に変化します。
家族の人数も、好みも、住まいの周辺環境も。
今は快適な窓が、数年後には視線が気になり、カーテンを閉めっぱなしになるかもしれない。
せっかくの風や光を感じられない家に、豊かさはあるでしょうか。
私は「光と風が流れること」
そして「住み手の気配が自然と交わること」を大切に設計しています。
家の質は、◯LDKや帖数では測れない。
空間の“間”が、感情に作用するから。
広さより、質。
豪華さより、心地よさ。
小さくても、大切なものが護れる家。
毎日を楽しめる家。
そんな空間を届けたいと本気で思っています。
【「余白をデザインする」ということ】
20代の頃、手描きパースを描いていた私に、当時の社長が言った言葉。
「君の絵は上手だよ。でも、余白もデザインしないとね。
額に入ったときのことまで、想像して描かないと。」
この言葉は、今でもずっと残っています。
設計も、余白があるからこそ心地よい。
私の家づくりのベースには、いつもこの考えがあるんです。
私は、かつての実家に感謝しています。
あの不自由さが、今の仕事に繋がっているから。
もし、あなたが「誰かの理想」じゃなく「自分たちらしい暮らし」を大切にしたいなら、
ぜひ一度、マイナスデザインの家づくりを覗いてみてくださいね。