静かな時間が流れる住まいのつくり方

私たちの設計では、装飾を足して空間を演出するよりも、素材そのものが持つ質感や空気感を大切にしています。
無垢の床も、モルタルの土間も、派手に自己主張することはありませんが、空間に「静けさと奥行き」を生み出してくれる素材です。

■ 無垢フローリング ー 時間とともに馴染んでいく素材

● 完璧さより“変化”を

無垢材は、工業製品のように均一ではありません。
木目も、節も、色味も、わずかに異なる。
けれどその個体差こそが、空間に人の温度と時間の経過をもたらしてくれます。

長く住むほどに色が深まり、艶が増していく。
住まい手と一緒に「時間を経ていく素材」なのです。

● 触れたときの“静かな感触”

無垢の床は、素足で歩いたときにわかります。
冷たすぎず、やわらかすぎず、どこか呼吸をしているような感触。
それはまるで、床というより“地面に近いもの”かもしれません。

無垢の床があることで、家具も暮らしも、ほんの少しだけ“低い目線”で穏やかに整っていく感覚があります。

■ モルタル土間 ー 引き算で生まれる余白のデザイン

● 境界をなくす“あいまいな床”

玄関や土間、テラスとのつながりに使われることの多いモルタル。
その質感は、木やクロスよりもさらに抽象度が高く、空間をフラットに見せる力を持っています。

「ここからが屋内」「ここからが屋外」とはっきり区切らず、グラデーションのあるつながりをつくる。
それが、モルタル土間の設計的な強みです。

● 静けさと粗さが同居するテクスチャ

モルタルには、無垢材とは別の魅力があります。
それは、無機質さの中にある、ほんの少しの“揺らぎ”。

完全に均一な表面ではなく、職人のコテ跡やわずかなムラが残る。
そこに、静けさの中に潜む素材の表情を感じるのです。

■ 素材そのものが「デザイン」になる

無垢フローリングも、モルタルの土間も、
どちらも“飾らない素材”です。

けれど、その“飾らなさ”の中にこそ、マイナスデザインが目指す
「余白」や「静けさ」が息づいていると私たちは考えています。

過剰に説明しなくても、目立たせなくてもいい。
そこに、ただ“ある”ということが美しい。
そんな素材と空間の関係を、これからも丁寧に積み重ねていきたいと思います。