この住宅のリビングには、
一般的なダウンライトを設けていません。
「暗くならないですか?」
そう聞かれることが多いですが…
でも、私たちは
“明るさ”と“心地よさ”は別物だと考えているからなのです。
例えばダウンライトは、とても優秀な照明です。
スイッチひとつで、部屋全体を均一に明るくできる。
ただしその一方で、光が均一になりすぎると
空間から“奥行き”や“静けさ”が消えてしまいます。
影がなくなると、部屋は「居場所」ではなく「作業場」に近づいてしまう…
このリビングで大切にしたのは、
・座る場所
・本を読む場所
・くつろぐ視線の先
その必要なところだけに光を置くこと。
スタンド照明や間接照明は「使う人の行為に寄り添う光」
天井から一方的に降ってくる光ではなく、
暮らしの中で選ばれる光。
夜のリビングは、昼と同じ明るさである必要はないと考えています。
ゆっくりと過ごしてほしいので…
少し暗い。
影がある。
静か。
を照明計画では大切にしています。
その方が、自然と声は小さくなり、
時間の流れもゆっくりになる。
どんな照明を選ぶかで、
その家の性格が決まりますから
明るさを足すのか。
余白を残すのか。
このリビングは、
「足さない」という選択をしました。
それが、マイナスデザインの照明計画です。