「いくらかかりますか?」
打ち合わせの初期段階で、よくいただく質問です。
建築に関わるお金の話は、なかなか本音で語りづらい部分でもあります。
ですが、マイナスデザインでは「何にお金をかけるか」という視点こそ、家づくりやお店づくりの本質だと思っています。
だからこそ、今回は「予算」や「設計費」について、少しだけお話してみようと思います。
設計費って、なんのために払うのでしょうか?
家を建てる費用の中で、設計費は「見えにくいお金」です。
壁や床、キッチンや照明のように、目に見えるものではありません。
それでも私たちがいただく設計費は、住まいの“あり方”を一緒に考え、形にしていく時間と知恵への対価です。
どう暮らしたいのか。
どこにお金をかけ、何を削ぎ落とすのか。
本当に必要なものは何なのか。
施主さんと一緒に考え、選び、優先順位を整理していくプロセスは、
建てた後の「後悔しない暮らし」につながる、見えない土台だと考えています。
「予算が限られていて、理想通りにはできないかもしれない」
そうおっしゃる方も少なくありません。
でも実は、“限りがある”からこそ、デザインが研ぎ澄まされていくことも多いのです。
全部を完璧にする必要はありません。
どこに広がりを持たせ、どこをコンパクトにまとめるか。
どこに光を入れて、どこを閉じるか。
メリハリをつけながら、「この人にとって一番大事なものは何か」を見極めていくこと。
それが設計の醍醐味だと感じています。
設計費の価値を一言で言えば、「間違えないための費用」だと思っています。
例えば、
・工務店にまかせきりにした結果、細部のデザインに不満が残った
・思った以上に追加工事が多く、予算をオーバーしてしまった
・そもそも何を優先すれば良いかわからず、後悔が残った
そんな声を耳にすることがあります。
設計の役割は、そうした「ズレ」や「後悔」を、できるだけ事前に整えることです。
そのためにマイナスデザインは、打ち合わせに時間をかけ、何度も描き直し、
言葉にならない気持ちまでも汲み取る努力をしています。
建築にかけるお金は、“費用”であると同時に、“表現”でもあります。
大理石の床を選ぶことも、ラワン合板を丁寧に仕上げることも、どちらも「美しさの選び方」です。
マイナスデザインでは、「何にお金をかけるか」よりも、
「何を大切にして、その選択をしたのか」を一緒に考えていきたいと思っています。
予算の話は、たしかに現実的で、ちょっと緊張するテーマかもしれません。
でもそのぶん、設計の自由さや、暮らしの本質に触れられるチャンスでもあると、私は思っています。
理想と現実のあいだを、無理なく、でも誠実に。
その橋渡しをするのが、私たち設計者の役目だと信じて。
「設計費のこと、予算のこと、正直に聞いてみたい」
そんな方は、どうぞ気軽にご相談くださいね。