「片づけやすい家にしてください」
そんなリクエストを受けることがあります。
もちろん、片づけやすさは大事です。
でも、本当に必要なのは、
「最初から“片づけがいらない”暮らしを設計すること」
ではないかと感じています。
つまり──
『物を持たない』前提で設計された住まい。
近年、多くの住宅が「収納たっぷり」をうたっていますが
「収納の多い家」が暮らしを豊かにするとは限りません。
収納が増えれば物も増えます。
そして、「とりあえずしまう場所」ができると
不要なものも“必要そうに”見えてしまう。
これは、物が“暮らしの主役”になってしまっている状態です。
収納をたくさん確保するために、廊下やデッドスペースが生まれる。
収納家具を置くために、広い壁が必要になる。
そのために、光や風を犠牲にしてしまうこともある。
でも、そもそも「物が少ない暮らし」を前提にすれば──
物を持たないことは、我慢ではありません。
本当に必要なもの・大切なものだけに囲まれること。
そして、それ以外のものに“場所”も“時間”も奪われない暮らし。
住まいが「何を持つか」ではなく、「何を持たないか」で設計されるとき、
そこには本当の豊かさが現れてくると感じています。
「片づけやすさ」はもちろん大事です。
でも、それ以上に大切なのは──
片づけなくていいくらい、そもそも物が少ないこと。
そんな住まいのあり方を、建築の立場から提案していけたらと考えています。